前回は、概念のうまれた背景や診断基準についてお話しました。今回は、原因とリスク、特に肥満についてお伝えしたいと思います。
まずはどれくらいの割合で人は「メタボリックシンドローム」にかかっているのでしょうか?
【メタボリックシンドロームの有病率】
ある欧米の報告によれば、米国成人の約24%がメタボリックシンドロームを持っていると考えられています。人種間でも異なりが見られますが、日本での有 病率の報告はありません。今回、日本の診断基準が出来たことで、正確な有病率が分かってくると思われます。
やはり欧米は多いですね!!日本も欧米型、主に肉中心の食生活になってきましたので多くなっているでしょう。
診断基準については前回お話した通りですが、やはり医療機関その他での細かい判定基準はあるそうです。それは単にメ タボリックシンドロームかどうかだけではなく、ステージ化しそのステージに合わせた治療の方法等が明記してあります。(以下に一部記載)前回お話した内容 はご自分のセルフチェック、スクリーニングとして行い該当した方はさらに医療機関等に相談されることをおすすめします。レベルによって必要な治療も違いま す。放っておくと取り返しのつかないことになりかねません。やはり何事も“早期発見、早期治療”ですね。
『参考:メタボリックシンドロームおよび固有疾患の判定』
・重症度について(肥満および糖尿病・高脂血症・高血圧症リスクの数によるもの)
D2(有病者ステージ2):薬物治療を要する
D1(有病者ステージ1):確定診断・食事/運動療法で可
BL(予備群):境界型
D2:食事・運動療法も大切ではあるが、近々薬物治療を要すると考えられる状態または薬物治療中。
どの医療機関でも概ね「医療」の対象とみなして対応することが多い。
D1:診断基準では「疾患」と判定されるが、薬物療法よりも生活習
慣改善を優先するもの。
医療機関においても初診時すぐに薬物処方をされない場合が多いと考えられる範囲。
現状では「まだ軽いから…」と放置されることも多い。ぜひ積極的な支援を行いたい対象
BL:境界型、高値正常など
※D1について
現状では医療機関での管理は十分にできていない状況と考えられる保健・健康増進機関での行動変容支援と医療機関での定期的な検査が望ましい。
※D2について
医療機関のみで行動変容支援が困難な場合、保健・健康増進機関と連携して行動変容支援をおこなう 。
(厚生労働省 生活習慣病健診・保健指導の在り方に関する検討会より)
では、メタボリックシンドロームの原因はどんなものがあるのでしょうか?
【メタボリックシンドロームの要因】
メタボリックシンドロームになる大きな要因は、体質と生活習慣にあるといわれています。体質については今のところ不明な点が多いようですが、すい臓から 分泌されるインスリンというホルモンへの抵抗性の増加や、脂肪細胞の機能異常が有力な説となっています。
一方、肥満がメタボリックシンドロームの原因であることは明らかです。肥満になると、脂肪組織や筋組織において糖の取り込み能力が低下し、糖を代謝させ るのに必要なインスリンがうまく働かなくなるわけです。さらに、肥満は筋肉や肝臓でのグリコーゲンを合成させる酵素の活性を低下させます。これらの結果か ら、血糖値が高くなり、インスリンの分泌が低下し、糖尿病や高血圧、高脂血症のリスクが非常に高まるのです。
特に、お尻や下腹部などに皮下脂肪がつく「洋ナシ型肥満」に比べて、内臓周りに脂肪が蓄積される「リンゴ(タル)型肥満」の方は、メタボリックシンドロームになりやすいといわれています。
最大の敵はなんと言っても肥満ということが明らかですね。「肥満は万病の元」とはまさにこのことですね。
最近は、前回お話したメタボリックシンドロームの診断基準のウエストサイズについていろいろな研究機関(大学の研究 チームなど)から女性の90cmから80cmにするのが適当ではないかと異論が飛び出したりする記事を見かけたりします。確かに女性より男性の方が基準が 厳しいというのには疑問に思った方も少なくないはずです。それは先にお話しましたつきやすい「脂肪」の種類が違うからなのです。女性なら皮下脂肪、男性な ら内臓脂肪がつきやすいとされています。皮下脂肪は内臓脂肪と違い、病気への影響は少ないといわれています。特に女性におけるある程度の皮下脂肪は大切な ものです。女性の方がウエストに余裕があるのは、男性より皮下脂肪が多く、相対的なリスクが男性よりも低いからです。女性の基準が男性よりもゆるいのは 元々このような根拠からなのでしょうがいろいろな研究チームの分析結果からは女性はウエスト80cmから心筋梗塞などのリスクが高くなっているようです。 これからもますますいろいろな研究がなされていくと予想されます。今のところ女性の基準は90cmですが余裕をもって80cmと認識していても良いのでは ないでしょうか。あくまでもその先にある恐ろしい脳梗塞や心筋梗塞などを早期に予防するためのものですから…。ウエストの1センチ、1ミリに一喜一憂する のではなく、目安と考え、他の検査値の推移にも注意を払うことが必要ですね。
メタボリックシンドロームはどのような悪影響をもたらすのでしょう?
【メタボリックシンドロームのリスク】
メタボリックシンドロームの人は、糖尿病を発症するリスクは通常の7~9倍、心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクは約3倍にもなるといわれています。
以前から高血圧や糖尿病、高脂血症などの病気や肥満、喫煙者などは心筋梗塞や脳梗塞になりやすいという事は言われていました。メタボリックシンドローム の危険因子を4つ全部持っていると、まったくもってない人と比べて心筋梗塞になる確率が30倍以上になるそうです。ひとつひとつはたいしたことなくても、 それらが重なることでリスクは急激に高まるのです。
メタボリックシンドロームって思っているよりとっても恐ろしいですね。
次は『その3 そんな恐ろしいメタボリックシンドロームの予防法や対策』についてです。どうぞご期待ください。
2006.07.21