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 戦前・戦中世代であるならば、食物の有難さは身に沁みてわかっていると思いますが、飽食時代である現代、その気持ちについても隔世の感があると思います。

しかしながら、食べ物があることが幸福であるかというと、一概にそうも言えないのが今回取り上げる摂食障害です。

1.摂食障害とは

 摂食障害は、拒食・過食の症状の総称を言います。発症は主に青年期で、圧倒的に女性が多く、先進国に多いのも特徴す。拒食・過食は全く違うものではなく、その現れ方が違う同一疾患といえます。では、それらを簡単に説明します。

(1)拒食

 症状の類型として「制限型」と「排出型」があります。

 まず「制限型」ですが、その名のとおりで食べられません。本人に自覚がないのがやっかいな代物です。炭水化物であろうが肉野菜であろうが、全ての摂食を拒否してしまいます

 次に「排出型」。前者の反動として現れる場合があり、これは後述の「過食症」ではなく、いわゆる「むちゃ食い」です。カロリー制限など無視の極みで過食に走りますが、拒食の根底にあるのが「太りたくない」「痩せたい」ですから、食べるだけでは収まらず、嘔吐や下剤等の服用がセットになってしまいますそれでいてバランスの良い食事とも無縁なので、このような食生活で感情が安定するはずもなく、暴力行為に発展してしまう恐れも高いのです。

(2)過食

 こちらはひたすら食べ続けてしまう疾患です。パターンは「排出型」と「非排出型」に区分されます。

 「排出型」は拒食の「むちゃ食い」に近く、過食と嘔吐や下剤の併用で、感情的にも不安定になり、抑うつ気分も伴う心身的に最悪の状況を作ってしまいます。

 「非排出型」はさらにやっかいで、身体的にも生活習慣上最悪な「肥満」をもたらし、糖尿病など治りにくい疾患に染まって初めて治療するようなケースも見受けられるのです。

2.なぜ起こる?

 摂食障害の原因はさまざまですが、概ね周辺環境への「心の対応」が微妙にずれてしまう事から発症するとされています。特に内面の成長途上のなかで、様々な人間関係や情報から「痩せていることへの(過剰な)評価」という固定観念を生み出し、自我とのバランスを保つために生きるために最重要な「摂食」にブレーキをかけてしまうのです。それらを引き起こす人の表面上は「手のかからない優秀な」という冠の中に隠れてしまうので悩みは深くなります。

3.対策

 治療については、上記のことから身体だけでなく心理的な治療も必要です。

(1)例えば拒食で体重減少が極端な場合には、点滴から始めることもあります。栄養状態も重要なポイントなので、患者本人の意向を踏まえつつ体重を調整します。

(2)心理的な治療としては、「認知的行動療法」「行動制限療法」「家族療法」などがあります。 

認知的行動療法は、まず患者の否定的な考え方(太るのが悪、何がなんでも痩せるべき)を前向き・柔軟な考え方に変えていく方法です。別の建設的な目標を掲げる等を実施します。

行動制限療法は、少し大変ですが、入院治療をし、今までの自分の行動を軌道修正していく方法です。ただし、患者本人に治療意欲がないとうまくいきません

家族療法は今までの家族生活に目を向けて、どこかに自分が感情の落し物をしていないか、家族関係でのあり方を見直し、本質的になぜ摂食障害に至ったのかを見つめる方法です。 

 

現代の病と言えなくもないこの病気ですが、食べるという人間の基本的な欲求行動について改めて考えていくのも良いかもしれません。

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