哺乳類である人間は、鼻で呼吸を行うのが本来の姿です。
そのため、口で呼吸すると、唇がカサカサになったり口の中が乾燥したり、感染症のリスクが高くなったりするなど、さまざまな弊害があると指摘されています。
それはどうしてでしょうか?
鼻は加湿器、空気清浄機、エアコンの3つの役割を持つ
鼻水は1日に1ℓも分泌されています。
そのうち約7割は、鼻を通る空気を加湿するのに利用されます。
鼻水が取り込んだ空気に湿り気を与えることで、体内に入る空気の湿度は90%以上に高められます。
しかし口呼吸では、これほど湿度を上げることができません。
唇が荒れて気になる人は、口呼吸になっていないかを、確認してみましょう。
鼻は、空気をきれいにする働きも持っています。
ほこりなどが体内に侵入するのを防ぐのが鼻毛です。
そして鼻粘膜に生えている微細な繊毛と粘液層が、細菌やウィルスなどを捕獲します。
鼻から入った空気はこれらの異物の多くが除去され、空気清浄機から放出された空気のような状態になっているのです。
粘液には抗体があるため、細菌やウィルスが粘膜の細胞に付着、侵入するのを防ぎます。
風邪やインフルエンザは、病原体が細胞内や粘膜で増殖することで発症しますので、鼻から入った空気は、口から入る空気より、感染症にかかるリスクが少なくなるのです。
鼻から呼吸することで、空気が暖められます。その温度は35~37度にもなります。
口呼吸ではここまで温められることがなく、冷たいまま肺に届けられます。肺にかかる負担が大きくなってしまいます。
このように、鼻は加湿器、空気清浄機、エアコンの3台を合わせた機能を持っています。健康のためには鼻呼吸が重要なのです。
口呼吸には感染症の危惧も
喉の奥にはリンパ組織があり、通常であれば免疫が働くのですが、鼻で排除されるべき異物まで喉に入ってくると、除去しきれなくなってしまう場合があります。
すると軌道が細菌やウィルスに感染する危険性が高まり、風邪やインフルエンザにかかりやすくなってしまいます。
歯肉炎などの発症や、虫歯になりやすくなるといったことも指摘されています。
これは口の中の乾燥が影響するからです。
鼻が詰まっている場合にはどうしたらいいのでしょうか。
鼻を温めることで解消できることもあります。
お風呂の温度より少し高いぐらいのお湯にタオルを浸し、絞ってから鼻に当ててみましょう。
脇の下を刺激するという方法もあります。
鼻がつまるのは、鼻の中の粘膜が炎症を起こしてうっ血している場合が多く、交感神経を刺激して血管を収縮させ、うっ血を解消するというものです。
握りこぶしを反対側の脇の下に挟む、500㎖のペットボトルを挟む、などいくつかの方法がありますが、どちらの場合も詰まっている鼻と反対側の脇の下に挟むことがポイントです。
交感神経は、右の鼻は左の脇の下、左の鼻は右の脇の下、というようにクロスしてつながっているためです。
ただ、脇の下には太い血管が通っています。脇の下に握りこぶしやペットボトルを挟む場合には、血流をあまり遮断しないよう、10~20秒程度にとどめるほうがいいという専門家もいますので、心得ておきましょう。
子供の口呼吸のリスク
子供のころから口呼吸が当たり前になってしまっていると、睡眠中にも口呼吸をしがちになります。
空気が乾燥する冬の時期には、睡眠中の口呼吸によって咽頭内が乾燥し、朝起きてからの喉の痛みを訴える子供が増え、病院を受診することが多いといいます。
こういった症状の場合は、普段の呼吸を鼻呼吸にするだけで、再び通院する必要のないケースもあるようです。
口呼吸の場合、歯列は咬合が正常でなくなることがあります。口を開けている時間が長くなるために、口輪筋による前歯の舌側への作用が弱くなり、歯が唇側へ傾斜するようになります。これは乳歯だけでなく、永久歯でも起こります。
口呼吸をしていると咀嚼機能が低下します。
そのため嚥下障害や消化障害も引き起こしかねません。
咀嚼しているときに唇が開いているため、音を立てて食事をするというマナー上の問題もあります。
様々な弊害から子供を守るため、いち早く鼻呼吸の習慣を取り戻させてあげましょう。
口呼吸と花粉症や睡眠時無呼吸症候群との関係
花粉症の時期は、鼻水や鼻づまりの影響で口呼吸になってしまう要素が増えてしまいます。
子供のころは、扁桃腺が口から入った異物に対しての防御反応を行う免疫の役割を担っています。
そのため、花粉症も異物と認識されて扁桃腺が炎症を起こしてしまう場合があります。口呼吸だと花粉症の症状が増えてしまうリスクもあるわけです。
口呼吸の弊害をやわらげるため、マスクの着用をお勧めします。
マスクはある程度、異物の侵入を防ぎます。花粉症用のマスクより、「ウィルス対策用」のマスクの方が、病原体の侵入を防ぐ効果が高いと考えられます。
自分の呼気でマスク内の湿度が上がるため、直接空気を吸うより湿度が高くなります。
夜寝ている間にマスクをするだけで、のどの痛みが軽減したという例もあります。
もちろん鼻呼吸に戻すほうを優先すべきですが、すぐにできない場合にはマスクを活用しましょう。
睡眠時無呼吸症候群に口呼吸が関係する場合もあります。鼻呼吸に比べて鼻から咽頭までの上気道が閉塞しやすくなるとされています。また、口呼吸はいびきをかきやすくなります。そのため、睡眠時無呼吸症候群になるリスクが高くなってしまうのです。
睡眠時無呼吸症候群の原因は、肥満などの他の要因が大きいのはもちろんですが、普段から鼻呼吸を心掛けるほうが、リスクを減らすことができる可能性があるのです。
これらのように、口呼吸にメリットはありません。普段から鼻呼吸をしているかどうか、確認してみましょう。
最後まで読んで頂きありがとうございました。